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これからどうなる!?日本のものづくり_日本のクラフツマンシップ・ビスポークについての考察

ApparelX News編集部の山佑です。

2019年5月22日に開催されました、*THOMAS MASON(トーマスメイソン)主催のイベントに参加してきました。

*1796年に英国ランカシャーで設立された、シャツ生地では世界で揺るがない地位を築いているブランドです。細番手の双糸を使用することにより、従来の手織機による織物より軽く、特殊な艶としなやかさを持った織物を開発し、高い評価を受けてきました。1991年にイタリアで100年以上の歴史を持つアルピニ社に買収されましたが、その後も英国テイストを残しつつ、世界中の男性から愛され続けられております。

 

どのようなイベントかと言いますと、タイトルにもある日本のこれまで、そしてこれからのビスポークについてを、ファッション業界では超が付くほど著名な方々、そしてスーツ、シャツ、靴それぞれの分野において一流の職人の方たちを交えたトークショー(ディスカッション)です。

まず、そこに参加された方たちですが、

・Simon Cromptonさん (ファッションジャーナリスト)

・鴨志田 康人さん (ユナイテッドアローズ クリエイティブディレクター)

・山神 正則さん (山神シャツ)

・上木 規至さん (チッチオジャパン (スーツ))

・福田 洋平さん (Yohei Fukuda (靴))

・鏡 陽介さん (伊勢丹メンズラグジュアリーバイヤー)

・平澤 香苗さん (MEN’S EX ONLINE 編集長)

と、ぜひ話を聞きたい!と思う錚々たる方たちです。18時40分頃みなさんが揃われて、いよいよトークショーのスタートです。

トークは、Simonさんを中心に話が展開され、その他の方たちがそれぞれのお考えを話していく、という流れでしたが、メインの話題は大きく分けて2つ、「現状、そしてこれからの日本のビスポーク」と「海外から見た日本のものづくり」です。

最初の話題では、ここ10年日本ではビスポークの盛り上がりがみられ、それはイタリアはフィレンツェの高級サルトリア「リベラーノ&リベラーノ」のアントニオ・リベラーノ氏や、同じくイタリアはナポリの最高峰サルトリアであるアントニオ・パニコ氏が日本人に技術を継承していることからも伺えるように、日本人の職人が世界で活躍するようになってきたから。(世界的にもビスポークがトレンドということも一助になっている)

このように世界で活躍するようになれば、日本だけで見るビスポークの市場規模は、現状はまだ伸びしろ(日本はパーソナルが好きなので)があるにしろ人口動態見地からも極端な拡大は厳しいものがあるが、それが世界、ということであればそれは比較にならないほど大きい。そのためにも、日本のスタイル、ハウスカットがキーワードになっていく。焼き物に代表されるように、有田焼、伊万里焼、益子焼などの所謂”日本流”が確立されれば、その道は大いに開けてくる、そして現在でもそれは発展途上ではあるが徐々に見え始めており、世界(今回の職人の方たちの顧客層では、中国、フィリピン、タイなどのアジア圏とイギリスやフランス、アメリカなど多岐にわたっていました)から、日本に買いに来る、ということが起きている、という日本人の一人としてわくわくするお話でした。ただその反面、規模を追求すると大衆化してしまい、クオリティーの維持が困難になるという課題もあるが、そこは本場イギリスのサビルロウを手本とし、一過性のファッショントレンド(アイビーブームやDCブームと言った)ではなく、しっかり根付かせることが重要、とのことでした。

また、2つ目の大きなトピックスの「海外から見た日本のものづくり」では、なんと聴衆に香港を代表するメンズウェアショップの「アーモリー」の共同設立者のマーク・チョーさんがいらっしゃっており、その質問に答えておりました。そこでは、やはり品質の高さとMade in Japanの信頼性、そして島国日本の神秘的イメージから「特別」に見られているという、嬉しいお言葉も。またSimonさんも、かつては日本の車や電化製品であった日本のものづくりが、今はファッションに広がっている、とのことでした。

その根幹として、アルチザンと呼ばれる根っからの職人には、日本人は世界的にみても非常に向いている(合っている)とのことです。それは日本人の国民性として、”わび・さび”の精神や謙虚な心、そして見えない部分にもこだわる職人気質がある、と日本人として誇りに思った瞬間でトークショーは大盛況のまま閉幕しました。

 

 

全体を通して私見として感じたことは、カスタマイズやパーソナルといったものが注目されているのは、ものが溢れている時代に、東日本大震災のような大災害に遭い、改めて”ものを大切にする”という日本人の精神的な変化があり、良いものを長く、なのかなと思う反面、日本人の例えばスーツに対するプライスイメージが安いことによる職人さんたちの低賃金体制はまだまだ改善の余地があるのではないか、これが是正されれば、子どもたちの将来の夢に〇〇職人になりたい!と思う子たちが増え、日本のものづくり風土、環境がより良くなるな、と思いました。そしてあっという間の1時間半でした。

 

最後になりますが、今回主催されたTHOMAS MASON(トーマスメイソン)のシャツ生地、ほんの少しですがApparelXでも取り扱っておりますので、ご興味のある方は是非チェックしてみてください。

 

ApparelX