ApparelX News編集部の山善です。
今回は2024年8月21日から3日間開催されたPreview in Seoulに出展してきました。その前日に韓国のアパレル資材の卸市場の東大門市場に行ってきました。そこで、感じたことや見えてきたことをレポートしたいと思います。
目次
東大門市場とはソウルの中心部にある東大門駅から徒歩2分程度に位置している卸売の繊維市場です。
フロアは下記の構成になっています。以前は6Fまでありましたが、現在は6階は一部の棟のみにファーなどの資材があるのみに減っているようです。
5F | アクセサリー用資材(ビーズやチェーン) |
2-4F | 各種アパレルやバッグ用の生地 |
1F | ボタン、レース、金属パーツや、肩パッドなどの副資材 |
B1F | インテリア・カーテンなどの生地 |
東大門市場は、A棟からD棟まで展開しており、それぞれの階層にはおよそ3,000社以上が店舗が構えています。階層ごとに多少の取扱資材の異なり、階層の中で、分類ごとにある程度店舗が固まっています。例えば、レース生地であれば、30店舗ほどが隣接した状態で区画を形成しています。
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生地の会社は概ねスワッチが下記の画像のように店頭に並べられており、自由にピックアップすることができます。つまり無償です。
店舗には実在庫はなく、サンプル分のリードタイムは確認できた店舗では朝に注文した場合は、当日の15:30には引取可能とのことでした。日本では倉庫からの配送に通常は1日かかるわけですから、相当早いことがわかります。量産分のリードタイムについては在庫がなければ一般的なリードタイムがかかるという印象でした。例えば染色で20日など。
また、原反やカット反が積まれている店はその場でのカットが可能なため、その場での着分の入手が可能です。
ただそういっカット反を置いている店舗はプロ向けでもありますが、学生や手芸をやられている趣味の方なども広く対象としているようです。
では他のカット反などの在庫がない店舗は誰が顧客になるのか?
東大門市場の果てしなく多い店舗はほとんどがBtoBで、買う側が学生ということを伝えるとサンプルの手配はしてくれません。理由は量産が無いからということになるため、学生は身分を偽り、ブランド名を名乗り手配することが通常なようです。
量産分のディスカウントもおおよそ100mぐらいから行うことができ、納期や価格など交渉をしていくと良いと思います。
生地から付属まですべてを見ながら手配ができる東大門市場ですが、その大きさが時間がかかりすぎる一面も持っています。イメージとしては、東京ビッグサイトで行われるファッションワールドが1フロアぐらいのイメージです。
そのためアパレルのデザイナーが直接行くことも少なくないらしいのですが、ファッション学校の学生がインターンとして働く文化があるようで、まずは希望の生地に近いサンプルを学生インターンにピックアップしに行ってもらい、デザイナーはサンプルを見ながら電話やメールで発注するという流れが主とのことでした。
発注方法も電話注文が主だったらしいですが、今は日本と同じようにメールやカカオトークやFAXなどでも発注が出来るようです。ただ、これは店舗ごとの世代やカラーによって異なる印象があり、高齢の方の店舗にはPCが無いこともあり、電話のみの老舗もありそうでした。
スワッチの作りは、一つの組織で色展開があるものはステープルで止まっていてビジネスカードあるいは、オリジナルの台紙についてるデザインでほとんどの店舗が同じ作りでした。
納品方法は国内発送もしくは、店舗での引取が通常らしいです。色々な店舗へ発注をし、全部まとまった際にピックアップしに行くのが主とのことです。
価格については生地にはカット代がなく、300m発注の場合では10%下がるかどうかといった具合だったので、いわゆる下駄を履くという意味のカット代などの手数料は単価に盛り込まれていないと感じました。
日本では、小口手数料という概念で20m以下500円アップや、1500円/式などの少額であっても一定の粗利を担保するような仕組みが初期の頃からありました。この概念は生地メーカーだけでなく、付属メーカーにも最近になって導入が進んでいます。例えば、あるボタンメーカーでは、韓国のように1個でも100個でも価格が変わらないという方式が以前では取られていたが、小口注文の増大から30個以下などのサンプル分は倍の単価になりました。
もちろんこの時代に、生産性の確保のためには、オペレーションコストを下げる事(効率の向上)や付加価値金額を上げる必要があるため、この概念については反対をする人はそこまでいないと思います。
しかしながら東大門市場で小口手数料のような概念を感じることができませんでした。それでなぜ商売を回せているのかを答えは出ていないのですが、一緒に考えていきたいとおもいます。
店舗があって、良い商品さえあれば、お客様であるアパレルから来てくれる文化があるため、商品自体の利益率が低くても商売として成り立っている可能性がある。
日本ではアパレルから生地会社のショールームに行くことは相手の手間をかけてしまう行為であったり、地方の生地メーカーの場合は、距離の問題で、生地メーカー側の営業がアパレルを訪問しなくてはならないため、その人件費や出張費などのコストが生地値に反映されて、価格も安く、利益もしっかりと確保できている構造であると推測できます。
3,000社以上の生地の会社がそれぞれ競合しながら店舗を構えているように見えますが、在庫管理のための倉庫やカット業務をする作業場などは一本化されていて、1社あたりの間接コストが低く生産性が高い可能性もあります。
全体的に納期を聞くと早いところで当日、遅くても翌日には店舗で引き取れることを考えると、在庫はソウル市内ないし、車で長くても3時間の県内に倉庫があることが推測されます。またその倉庫からのデリバリーは一般的な宅配便ではなく、東大門市場専用の配達便が存在していることの可能性も否定できないでしょう。
1回あたりの配送も集積すれば1件あたりの配送料は最安にすることができ、高い生産性を実現することができます。日本では取次品というものもありますが、それぞれの会社がそれぞれの倉庫と契約を結んでいるため、上記のようなモデルの場合はコスト構造で差をつけられてしまうため、安くなっていることが考えられます。
逆説的な考え方ではありますが、昔からカット代などの商慣習がなく、今更上げられないといった状況が考えられます。
それぞれの店舗は取扱生地に近い生地が隣の店舗でも取り扱われており、値上げやカット代などを加えた場合は、競合他社に顧客が移動してしまい、失注が多くなってしまいます。そのため、過去の商慣習を引きずってるということも有りえます。
東大門市場の便利さは、そこにさえ行けばほとんど全ての商品を見ながらサンプルを探すことができます。日本では現在カタログやwebカタログなどを見ることが多くなってきました。そういった所に東大門の利点があるなと感じます。
ただやはり希望の資材を探すのには相当な時間もかかるため、これから更に効率化をしていく必要があるとも感じましたし、そういったことが出来るようにするのがApparelXを運営している私達の使命なのではないかと改めて感じました。
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ApparelX News編集長。
レディース・カジュアルブランドのデリバリ業務を経て、現在は、アパレル資材BtoBサイトApparelXの運営をしています。自分自身が分かりにくかったことや、役に立てる情報を発信していきます。