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米沢産地に行ってきて見えてきた産地の状況

ApparelX News編集部の山善です。

今回は2024年7月に行った米沢産地で見てきたことをレポートとして書いていきます。

今回お伺いさせていただいたのは、東匠猪俣さん(織元)、東北整練さん(整理加工)、宮本織物さん(織布工場)、キハラさん(整理加工)でした。一部写真もNGな部分もあったため、すべてはお見せできないですが、最後にギャラリーを紹介しますので、日本の産地のものづくりに是非触れていただければと思います。

この記事では下記の3点を中心にまとめています。

  • 米沢産地とは
  • 各加工場の風景
  • いかに生地を作るのに人の手がかかっているのか

米沢産地とは

そもそも産地とは

そもそも産地とは何なのかというと、行程が多くあるため、今も産地と呼ばれる地域ごとに多少の異なる部分はあるが、生地を材料調達から生産まで一貫して出来る会社が集まっている地域のことです。

歴史的な背景も持ち合わせており、多くが1800年代やもっと前からその当時の藩主の命令あるいは自然発生的に産業として成り立っていき、明治時代には産業として組合が発足されたりしていっています。

その当時の伝統的な素材や織り方も残っているものの、戦後の高度経済成長期、バブルの崩壊を経て、産地内でも独自の方向性を出す会社があったり、他の産地との協業を行う会社もあり、伝統的な要素も残しつつ、時代に合わせた変化をしていっています。

米沢産地の主な成り立ちと現在の強み

米沢産地は米沢城の城主であった上杉公の経済状況の好転のために 新潟より技術者を招いて蚕から取れる絹や、朝などの素材による織物として発展しきました。米沢織りといって、着物の業界では地位を確立しています。

現在は絹や麻などだけではなく、合繊なども取り扱っており、それぞれの織元ごとに少しずつ特色が異なっているようです。

ある織元さんでは先染めシルクを用いて最低ロット100mmでおよそ45-60日の短納期で生産ができる背景をもっていたりと小回りの効く会社さんもありました。


絹糸の整経作業風景について

米沢産地では絹の先染めの生地を作る機屋さんが多く、100m前後の経糸で作ることが多いようです。今まで経糸を織機に通す作業については見たことがあるものの、経糸を作る作業は見たことがなかったため、とても手間がかかる作業だなと感じました。

作業工程としては、糸を釜で染色した後に手作業でその糸を1本ずつかせ巻きにしていきます。これは手作業です。

その後、かせの状態からボビン巻のような状態に巻き直します。これは機械で自動で巻きます。

最後に、それらを並べて経糸を大きなドラムに巻ながら経糸を作っていきます。

上記のように見たことを文章にしてみると、なかなかうまく伝えられませんが、かなりの人の手がかかっていることだけはお伝えしたいなと思います。

整理・加工とは

東北整練さんを見学させていただいたのですが、こちらは写真がNGのため文章のみでお伝えします。

厳密には異なるのかもしれないが、整理や整練というものは、生地を織布する際には、織りやすくするために糸にオイルをつけていたりするため、そのままの状態では、染色が出来ません。そのため、一度薬剤や、高温のお湯につけることによってまずは生地をきれいな状態に戻すことです。

生地の素材によっては、いきなり高温で洗ってしまうと、生地がシワになったりしてしまうため、40℃→80℃とゆっくりと温度を上げていって、丁寧に不純物を取り除く必要があります。

また生機の状態から生地の表情感やシワ感などの加工を施すのも整理・加工の役割で、生地を大量の水で叩きつけることにより撚られた繊維を解く解撚(かいねん)をすることによって、生地に膨らみをもたせることもできます。

仕上げ前にこういった加工をすることによって、家庭洗濯をしても消えない生地の特性をつけることができます。

逆に仕上げ後にシワをつけたりしても簡単にとれてしまうということで、大事な加工の行程といえます。

その後に、染色や撥水などの機能性をサンプルで取ったデータを基に染料を調合し、色を入れていく作業になります。

商品によっては生機では200cm幅になっていたものの120cm幅ぐらいに縮み、密度が高くなります。

仕上げ加工について

仕上げは生地を乾かして、生地の耳に当たる部分を針でさして、ゆっくりとその生地規格にあった幅に広げていくという加工がをしていきます。ベルトコンベアのような機械に生地をセットし、ゆっくりと広げていく行程は写真を取れなかったのですが、大きさとしては幅3m、高さ5m、奥行き10mほどの機械でゆっくりと動いていました。

その後縫い合わされて一気に加工された生機を一つ一つ検品(検反作業)を人の目視によって行い、メーカーごとの基準に照らし合わせてA反を作っていきます。ここでも生地規格に応じて長さをカットして、紙管巻きにします。

整理・加工所の排水について

最後に染色などで出た真っ黒い排水を、およそ数億円かけた敷地内にある排水施設で、微生物に不純物を食べてもらってきれいにしていく部分を見せてもらい、最初は真っ黒だった水が透明とは言えませんが、大分きれいになった状態にするということをしてました。

これは産地がある自治体ごとに排水の基準が異なり、年々求められる基準が高くなっているようです。自社で排水処理もしなくてはならないため、なかなかイニシャルコストがかかるため、新規参入の染工所が出てこない現状があるようです。

もちろん環境問題も重要なため、こういったことになっていますが、最近の燃料などの費用も上がっているため、ガス代だけでも月間数千万円かかってしまうことなど、原材料の値上がりも当然なんだなぁと感じました。


織布工場について

宮本織物さんという工場にお邪魔をしてきました。

織機は合計で10台以上稼働しており、ドビー織機、ジャガード織機が常にゴウンゴウンと外からでも聞こえてくる工場でした。

ドビー織機はタフタなどの無地を織るのに適した織機で、単純な柄も織ることが出来ます。織機によって異なるかもしれませんが、馬糸(通じ糸)と呼ばれる上から経糸を上げたり下げたりする仕掛けが、後述のジャガード織機よりも単純なため、細かい柄は作れません。ただその代わり早さがあるため、裏地などにもよく使われれる織機とのことでした。

一方ジャガード織機は馬糸が2,000本以上あり、それぞれがその柄に合わせた独立した動きをしており、柄を細かく出すことができます。マシンジャガードと呼ばれるパンチカードを必要とする旧型も残っていますが、現在では電子ジャガードという柄データをコンピュータで読み込ませるタイプが主流になっているようです。

また馬糸というのがなぜ馬なのか聞いたところ、恐らく昔は馬の毛を使っていたのだろうとのことでした。

ジャガードは色んな別注の生地を織っているため、画像を載せることはできませんが、米沢産地の絹糸は天然繊維ということもあり、経糸が切れることがポリエステルの糸より圧倒的に多く、それぞれの経糸に切れたら、パトカーのパトランプのようなものが光り、異変を知らせてくれるそうです。経糸を機械につなぐのを最近は機械でと聞いていましたが、まだまだ手でつなぐことも多いらしく、正直もその大変さはいわゆる試作反を作るのも100mを作るのも作業としては全く変わらないことをリアルに感じることが出来ました。

動画もあるのですが、見たい方がいらっしゃれば公式Xアカウント(@APPARELX_)へお問い合わせください。


まとめ

いかがでしたでしょうか。別注生地の際にお客様へ伝える内容ではありますが、聞いたことや知っていると思うことも実際に目で見てみると自分の中に知識として完全に定着する感じがしました。ものづくりは川上から川中、川下までつながっており、それぞれのレイヤーによって役割は違いますが、相互理解をしながら進められるようにしていきたいと思いました。

次回は米沢産地で別注生地を作る方法について書いていきます。

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