毎度お世話になっております。ApparelX News編集部の山佑です。
さて今回のブログですが、オーダースーツにおける、選ぶ楽しみの一つであります、スーツ唯一の突起物である「ボタン」についての基本をお伝えしたいと思います。テーラー様、専門店様が消費者の方にご説明しやすいようにまとめていきたいと思います。なお、こちらはあくまでボタンの基本のブログになりますので、そんな事知ってるよ、と思われる箇所が多分にあると思いますので、そういった方はサーっと流し読みしていただければ幸いです。
それでは、ボタンの素材別に、その特徴と参考商品をご案内させていただきます。
目次
まず、素材を大別しますと、「プラスチック素材」、「金属素材」、「天然素材」、「その他」に分かれます。その素材の代表格、特にオーダースーツに使用するボタンにフォーカスします。
ボタンと言えばこちら!!というくらいド定番で代表的な素材になります。
石油を原料とした不飽和ポリエステルの樹脂で作られており、液状で常温硬化が可能な為にボタンとして加工しやすい事が特徴です。
1955年にアメリカがポリエステル樹脂を使用して貝の光沢を表現した製造技術を開発し、それまで主流だったアクリルに取って代わって、貝ボタンの代用品として日本にも広がっていったのが歴史です。現在は日本のみならず、世界のボタンの製造で大きな割合を占めています。
特徴としましては、色出しが自由にでき、後述致します、水牛・貝・ナットと様々な素材の代用品として多様なデザインのバリエーションを見る事が出来ます。それぞれ代用される素材によって製造方法は大きく異なり、アルミのパイプに材料を流し込んで柄を出す方法や、直径1メートル以上の大きなドラムの中に材料を流し込んで、遠心力で層を形成する方法などが代表的です。単体の他にも他の素材との組み合わせで作られているボタンも数多くあります。
安価で種類(色や形状)豊富、そして耐久性に富んでいるボタンとなっております。
上記のようなボタンは、各縫製工場にもストックされており、スタンダード仕様として割増料金など掛からず使用でき、よく使われるボタンではないでしょうか。
または、
ツヤ感があり、模様が入っているものや、
このようなちょっと遊び心のあるボタンまで。
そして、ファッションの本場、イタリアで作られたポリエステルボタンもあり、
と、多種多様でございます。
その他、プラスチック素材のボタンとしては、牛乳を原料としたカゼイン(カゼイン樹脂)、石油から作られるナイロンやアクリル、〇〇調(水牛調やべっ甲調など)ボタンなどに見られる堅牢度の高いユリア樹脂(尿素樹脂)などがございます。
紺のブレザーに金ボタン、まさにアイビールックのメタルボタンの中でも高級感のある真鍮は黄銅とも言われ、銅と亜鉛の「合金」です。”延びる”性質があるためにプレス加工、切削加工のいずれも可能です。
かぶせボタンは合わせボタンとも言い、中身が空洞で表パーツと裏パーツ合わせて折り曲げて留める”かしめ”という方法で作ったボタンです。多くはこの製法で加工されます。表と裏のパーツは真鍮の板材に各々金型を使ってプレスで模様の凹凸を出し、不要な部分を切り落としてからかしめます。真鍮線を丸めたボタン足を付ける場合も裏パーツに自動で取り付けることが出来ます。
といった具合に、いろいろな柄がございます。
しかし残念ながら、オーダーの縫製工場には、在庫リスクを軽減するため、あまり種類がないのが現状です。そういった場合は、お店にボタンのカタログなど置いておいて、消費者の方に選んでもらうのも一興ですね。
また、メタルボタンは多くの縫製工場では割増工賃対象となり、お店でも有料オプションとするところが多いのではないでしょうか。
金属素材のその他の種類は、プレス加工で表現できないような繊細なデザインやボリュームのあるものを作れるメタルキャスト(低融点合金)や、亜鉛を高温で溶かして、高圧成型機によって金型に流し込んでボタンを作るダイカスト(亜鉛)などがございます。
続いては、オーダーならではの高級感を出せる天然素材シリーズです。
こちらは、その名の通り”天然”なものを利用しているため、1個1個模様の出方だったり、色合いだったりが微妙に違い、1つとして同じものがないところが、オーダー同様、唯一無二感があり、多くの縫製工場、ショップ様で採用されているボタンで、消費者の方にも愛されているのではないでしょうか。
南米エクアドル産のタグワヤシの実が原料のナット(椰子の実)ボタンです。
表皮を削ると象牙に似た色の地肌が現れる事から、”アイボリーナット”や”ベジタブルアイボリー”とも呼ばれています。美しい木目と、艶もまた特徴の一つです。
加工方法は実は適当な厚さにスライスし、ボタンの大きさに合わせてくり抜き、さらに表面を削って表情を出して形にするというものです。最後に磨きをかけて光沢が出たらナットボタンの完成です。この加工方法はドイツ人によって開発・機械化され、長きにわたってドイツによって製造された後に、北イタリアに広まっていきました。
天然素材の中では、比較的安価で付けれて、貝や本水牛と比べると耐熱性に優れたボタンとなっております。
また、染色や捺染などにより木目を活かしたまま染色が出来る唯一の素材です。
*貝も染色できることは出来ますが、光で色がさめやすい性質が有り、上記のように模様を活かす、というは難しいです。
ボタンに使用される原貝は主に南方諸島に見られるもので、白蝶貝・黒蝶貝・高瀬貝・メキシコ蝶貝などがあり、ほとんど輸入でまかなわれています。 天然物なので生息地によって品質や等級が分けられています。
原料として最も多く使われているのは高瀬貝で、薄い表穴から裏足のものまでデザインのバリエーションも豊富です。蝶貝と呼ばれているものが平たい貝であるのに対して、円錐形の巻貝の形をしているのが特徴です。
マザーパールボタンの名を持つ白蝶貝は真珠層の持つ光沢がとても美しく高級なシャツやドレスで見る事が出来ます。
貝ボタンは長い間、手作りされていましたが19世紀に加工機が開発された事によって量産されるようになりました。貝ボタンの製造工程は樹脂素材と同じく面削機による表面の切削加工ですが、加工には独特の専門的技術が必要になります。
多くは、夏用素材のリネンやコットン、シアサッカーなどのジャケットに付けれられ、爽やかな印象が出るボタンとなっております。
気を付けていただきたい注意点としましては、プレスや洗浄のたたき作用で割れることがあります。ですので、クリーニングの際は出来れば取り外していただきたい素材となります。(それはなかなか難しいので、クリーニング屋さんに「割れやすいボタンなので」と一言添えるのが宜しいかと)
ボタン史の中でも骨・角・蹄(ひづめ)を素材としたボタンは起源が大変古く、古代に発明された木の実や貝に次ぐ歴史をもっています。
古代ギリシャ時代には、金銀とともに貴重な宝飾品でもありました。
角は輪切りにスライスしてからくり抜いて表面を加工する方法や、中空洞の角を切り開いて圧版状にして、それをくり抜いて加工する製法。
19世紀の水牛ボタンには、素材をくり抜いてタブレット状にしたものに圧力をかけレリーフを浮かび上がらせる手の込んだ製法で作られた装飾的なボタンも登場しました。ナポレオンに携わったジョセフィーヌやマリールイーズもこのボタンに肖像が刻まれています。
個人的主観もありますが、高級オーダースーツと言えば、こちらの本水牛ボタンを付けられるのではないでしょうか。
こちらも多くのショップ様では、有料オプションとして3,000円~5,000円くらい掛かっていると思います。それでも、付けられるのは、まさに天然素材らしい独特な模様、高級感漂う重厚な作り、どんな生地にでもマッチする多様性、などに惹かれるのだと思います。
牛や馬や山羊の表皮を使用して作り上げられたボタンです。原皮はアメリカ、オーストラリアからの輸入です。皮はクローム仕上げとシブ仕上げの二種類に大きく分ける事ができますが、ボタンに使用させる材料は主にシブ仕上げで作られます。
皮は、それぞれのボタンのサイズに合うように裁断し、薄くはいで厚みを整えたものを職人が一つ一つ丁寧に編み上げ、型押しして成型する方法や、厚い一枚皮を型押しして成型する製法などがあります。
裏と表の質感の違いをデザインに取り入れたり、色付けしたものの表面を削り取ってトーンの違いを表現したものなど、皮のもつ独特の風合いをいかしたデザインが多く、様々な製法のボタンが19世紀に多く作られたと言われています。
革ボタンと言えば、秋冬物の厚手の生地で作るカントリージャケットやハンティングジャケットなどに付けられる方が多いかなと思います。
こちらも縫製工場によっては、在庫してない、もしくは種類が少ない場合がありますので、事前にご確認されるといいでしょう。
天然素材のボタンでその他の種類としては、木(ウッド)ボタンでしたり、竹を薄く削って編んだ竹ボタンなどがございます。
服と同じ布や生地で表面を包んだボタンです。小円盤状の芯として古くは木、角、骨製が、そして19世紀以降はアルミニウム等の金属が使われ、これに布類をかぶせ、シャンクの付いた金属パーツを裏側に合わせて作ります。天丸(半丸)型のものが一般的ですが、リング状の縁のあるものやメタルパーツと組み合わせたもの、ツー・トーンのものなどがあります。
オーダースーツで言えば、真っ先に思い付くのが、タキシードに使用する拝絹クルミボタンではないでしょうか。逆に言えば、メンズスーツではそれ以外にはあまり使わない印象がございますね。
その他の種類としましては、ガラスボタン、パール(塗装)ボタン、陶器や磁器で作られた陶磁ボタン、色ガラスを高熱で焼き付ける七宝(しっぽう)ボタン、などがございます。
いかがでしたでしょうか。
素材別に歴史や、適するアイテム、またオプション料金などを含め、「オーダースーツのボタンと言えば」という視点よりメインどころを一挙にご紹介させていただきました。最後まで読んでいただきありがとうございました!!
上記では紹介しきれなかったボタンはまだまだまだまだたくさんございます。ボタンをお探しなら、ApparelXのボタンコーナーへ!!
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全国展開のオーダースーツ店にて2年間修行後、服飾資材の道に。
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